補聴器のフィッティングとは
1番合うように選んだ補聴器の機種を、さらに各々の難聴者に合うように調整する作業を「フィッティング」または「適合」と呼びます。
正しくフィッティングをされた補聴器は大変役に立ちますが、いくら高価な良い補聴器を求めても、これが正しくおこなわれないと宝の持ち腐れといっても過言でありません。
「フィッティング」は補聴器を装用者の聴力や環境に合わせて調整することです。フィッティングの際にはまず、耳鼻咽喉科か専門機関に相談し、聴力検査等を行ってもらう必要があります。
メガネと異なり補聴器は1台の補聴器で何種類もの聴力に調整することができます。すなわち、どの補聴器を購入するかということ以上に適合(フィッティング)しているかどうかのほうが重要なのです。
フィッティングが必要なときとは
・自分の声が頭に響いている
・他人の声が変な感じで聞こえている
・補聴器をすると声が出しにくくなる
・コップや茶碗を置く音が響く
・新聞をめくる音がうるさい
・ドアの開け閉めの音が響く
・せんべいや潰け物を食べるときに響く
・補聴器をしていると肩や首筋がこる
・補聴器をしていると頭が痛くなる
・補聴器をしていると耳の中が痛くなる
・補聴器をしているとすぐ、はずしたくなる
補聴器は高価なものです。ですから、補聴器店で試聴をするだけでなく可能な限りレンタルさせてもらって生活の中で試聴することが必要です。
補聴器を実際に使う環境の中で音をいてみることで効果がはっきりしますし、また長時間装用することにより明らかになる不都合(たとえば、疲れて肩がこる等)もあるからです。
良心的な補聴器店の場合、購入したものでも、短期間であれば機種交換や返品の相談にも乗ってくれます。良い意味での消費者意識をもって補聴器を吟味しましょう。そして、決して、補聴器をタンスの肥やしにしないようにしてください。
補聴器のフィッティングの仕方
補聴器は器械を求めるのでなく、フィッティングを購入すると考えなければなりません。
そのためには、次のような調整をおこないます。そして必要に応じ、フィッティングは、使う人が満足を得られるまで、くりかえしておこなわれるべきです。また半年に一回くらい、定期的に聴力検査、フィッティングをくりかえす必要があることを忘れてはなりません。
音質の調整
全周波数にわたって音を増強するのか、高い音を強調するのか、低い音を増強するのかなど、周波数特性の調節は従来から実行されていますが、近年はより精密におこなうことが可能になっています。
出力の調整
音を増幅して快適にきこえる大きさにすることです。過大な音により、不快レベルに達しないように出力制限装置で調整します。
イヤホンの調整
イヤホンは耳にうまく合わないと不快になり、痛みが生じます。材質が合わないと耳を傷つけることになります。
ハウリングは、補聴器のマイクとイヤホンが近接していたり、増幅度が大きい場合におきやすいです。耳穴型補聴器では、イヤホンから出た音が外耳道とイヤホンの間の隙間を通ってマイクに入ってしまうから、とくにおきやすいです。
このハウリングを防ぐにはイヤホンを密に外耳道にはめこめばよいわけで、外耳の型をつくって、この中にイヤホンをはめこむのが「イヤモールド」です。
耳穴型補聴器で、全体を型にはめて包みこんでしまうものをカスタム型といいます。ポケット型(箱型)補聴器では、本体を胸のポケットに入れている限り、ハウリングがおきることはありません。
補聴器のハウリング(ピーピー音)とは
補聴器からピーピー変な音が聞こえてくることがあります。故障なのでしょうか?という声をよく聞きます。
この音はハウリングと呼ばれる現象で、ほとんどの場合、耳せんの装着状態が悪いために起こります。
ハウリングは補聴器で増幅された音が耳の穴から漏れ、また補聴器のマイクに入るために生じる現象です。
カラオケのときにスピ一力の近くにマイクを向けると、キーンと不快な音がするときがありますが、同じことが補聴器でも起きているのだと考えればよいわけです。
原理からいって、マイクと音の出るところが近いほど、ハウリングは起きやすくなります。ですから、小さい耳穴形補聴器が一番ハウリングが生じやすく、次いで耳かけ形補聴器、そして最もハウリングが生じにくいのがポケット形補聴器となります。
また、難聴の程度が重い人ほど大きな増幅が必要ですから、その分、音漏れもしやすくなり、ハウリングを起こすことが多くなります。
ハウリングの音はキンキンした高い音ですが、このような音を装用者自身は聞こえていないことがよくあります。家族や周りの方が日頃から注意を促し、ハウリングの防止に努める必要があります。
ハウリング防止の方法
ハウリングがしているときはピーピー音だけが増幅されて補聴器の効果はまったくといってよいほどありません。ハウリングを防ぐことは快適(こ補聴器を使ってもらうための大切な条件になります。
ハウリングを防ぐ方法は次の2つです。
耳せんをしっかり挿入する
耳からの音漏れがハウリングの原因ですから、耳せんをしっかり挿入することによりそれを防止できます。
ただし、耳かけ形補聴器や耳穴形補聴器など小型のものは、高齢者の場合、上手に装着できないことがあります。特にイヤモ一ルドと呼ばれる耳型耳せんやオーダーメイドの耳穴形補聴器は形状が複雑で装着が苦手な方が多いようです。
イヤモールドやオーダーメイドの耳穴形補聴器は各々の耳の形状に合わせて作成されますから、ぴったり装持できれば通常のものよりハウリングを防止でき、しっかりと音を聞くことができます、補聴器を購入する際に可能な限り自身で装用できるものを選ぶことが大切です。
マイクと耳を遠ざける
耳せんの装着ではどうしてもハウリングが防止できないときには、ポケット型補聴器にきり替えてマイクと耳の穴の距離を離すという方法があります。
距離が離れるとハウリングは起こりにくくなります。ボリュームを下げることでもハウリングはおさまりますが、それでは必要な大きさで音を聞くことができなくなりますから注意すべきです。
補聴器は普通に会話したときによく声が聞こえるように調整されています。したがって2、3mまでの距離だとよく聞こえるのに、5m以上離れたところの声はあまり聞こえません。
このために、補聴器の効果がないと思いこんでしまう人がいます。
1、2mの距離の声は、フィッティング(適合)さえしてあれば耳に十分届くはずですから、隣の部屋から大声で呼びかけるのでなく、面倒がらずに近づいて普通の声の大きさで話すようにします。